私の中の三島由紀夫

 

 

かにミサイルと申します。

 

はじめにひとつお聞かせください。

 

皆さんはスケベですか?

 

答えなくて大丈夫です、性欲は人間の根源です。むやみに否定したら、心身ともによくはありません。

しかしまた、もうひとつだけ、お聞きします。

 

皆さんのお心には、お天道様、ありますか?

 

その二つの質問なに? と思われても仕方ありません、順を追って説明します。

「お天道様が見ている」という日本語の表現があります。

 

他の誰かが見ていなくともお天道様はきちんと見ているのだから、どんなときでも悪行はするべきではないという考え方です。

つまりお天道様とは、人々の心に灯った倫理と道徳の象徴なのです。

 

 

スケベとお天道様、欲望と倫理。どちらが欠けてしまったら、人間らしい営みをつづけることは叶いません。

そして私にとっての、お天道様が三島由紀夫になるのです。

私が良からぬもの――倫理や道徳から外れた対象に劣情を抱くたび、頭の中に三島由紀夫が現れるのです。

 

市ヶ谷駐屯地を占拠し日本へ向け、真の武士たる魂を説いた三島由紀夫の姿が。

 

さて、前置きが長くなりましたね。

本日は、私の頭の中を開陳いたします。ルールは以下の通りです。

 

1.私がスケベに感じたものを書きます

2.倫理に抵触した時、三島由紀夫が演説を開始します

 

そして、登場人物は以下の通りです。

会社員。スケベに感じるものの範囲が異常に広い

戦後日本を代表する文豪。代表作は「金閣寺

 

よく分かりませんか? やってみれば一目瞭然です。

これは道徳の外注化になります。倫理という安全装置から解き放たれた私は情欲の獣です。

 

ドスケベ文章を書きますよ? 大丈夫? ホントに? 引かない? 戻るなら今だよ?

 

 

 

 

 

やっぞ!!!

 

 

 

1.レベッカ宮本

おまえら聞けぇ、聞け! 静かにせい 静聴せい! 話を聞け!

えっ? 早くない? もう? 三島って、最近のインターネット?

 

……

……

 

……えーと、レベッカ宮本こと、ベッキー氷川へきるが月刊Gファンタジーで連載していた「ぱにぽに」に登場する天才しょ――

日本を守る事。日本を守るとは何だ。

あっ…… すみません、なんかダメみたいです。

……

……

 

そうか、そうだよな。面白くないよな。架空のキャラクターと言えども幼い女性に興奮していることを表明するなんて、時代遅れのホモソーシャルの笑いだわ。今のインターネット、冗談でもそんなこと言っちゃいけねえよな。

……

ありがとうだわ、三島。俺にそのことを気づかせてくれて。

 

 

2.将棋の感想戦

おまえら聞けぇ、聞け! 静かにせい 静聴せい! 話を聞け!

はやっ、はやすぎるって三島。みんな分かんないって。三島は稀代の文豪だから察知できるけど、みんな分かんないって。

……

説明します。

 

それはある夏の日でした。うだるような暑さから逃げて私は自室でプラモデルを作っていました。パチッとランナーからパーツが外れる音だけが響く室内、それだけではどこか寂しくて。何か音楽のようなものが欲しくなった私はテレビをつけました。その時、あの滑らかに動く指先たちを見たのです。

……

 

棋士の指先。それに私は強く魅了されました。カメラが切りとった場面は対局を終え、感想戦をする棋士たちでした。

……

 

棋士はなめらかな手つきで盤上の駒を手繰り、過去の盤面を再現します。めまぐるしく指し手が変わっても、指先たちはぶつかりません。その手先の動きに調和のとれた美しさを感じました。

……

 

一見事務的ですが、将棋への情熱という熱を帯びていた指先。そこから鳴るパチンという音はどこか優しげで、私の手に持ったニッパーから鳴る無機質な音とはまるで違ったのです、とても官能的な光景でした。

盤になりてえな。なりてえよ、俺。将棋への愛を俺に分けてくれよ、なあ。俺、マッキーで腹に升目を書くからさ、その上で感想戦してくれよ。駒ごしでもいいからさ、その指先の軌跡を感じてえんだ。そして指先はふとした瞬間、

胸の飾りに触れ――

武というものは何だ、刀というものは何だ。

諸君は武士だろ。諸君は武士だろ。

 

長くない? 

どうしてそこに諸君は気がつかんのだ!

俺は諸君がそれを絶つ日を待ちに待ってたんだ。


諸君はその中でもただ、小さい根性ばっかりに惑わされて、本当に日本の為に立ち上がる時は無いんだ。

 

我慢してたから?

 

 

3.ウナギイヌ

……

よし。最初の関門は突破した。

……でも、書くのやめようかな。ウナギイヌに性的興奮をしているなんて、意味不明すぎるよな。天才バカボンに出てくるウナギイヌっすよ。

……

今、インターネットは共感の時代だし、そもそもこの記事も誰かを傷つけるかもしれな――

おまえら聞けぇ、聞け! 静かにせい 静聴せい! 話を聞け!

えっ?

男一匹が、命を懸けて諸君に訴えてるんだぞ。

あれ? もしかして、三島……

 

 

……

俺、やります。やらせてください。

 

なにもウナギイヌそのものに強い劣情は感じていません。重要なのは要素です、要素。キーワードはウナギイヌ、ケモノ、ビッチョビチョ、です。

 

ウナギイヌがセクシーだと気づいたのは、もう10年以上前――高校生の頃です。その時の私はケモノと呼ばれる存在を愛していました。

 

今でこそ、ケモノジャンルは有名になりましたが、当時はほぼ無でした、無風でした。当時の私は、赤茶けた荒野で小さな白い花を探すかのように、インターネットの海を彷徨っていました。

その時見つけたのが、ウナギイヌのエッチなイラストなのです。

 

非常に驚きました。そうか、ウナギイヌって犬だからマズル(鼻のこと、愛好家はそう呼ぶ)を伸ばしていいんだ。それに半分うなぎだから、肌がラバースーツにみたいにテラテラ濡れてて、めっちゃエッチじゃない? ウチ、なんで今まで気づかなかったん?

 

とにかく、目からウロコでした。

 

ウナギイヌは、ケモノでヌッメヌメ、ビッチョビチョ。その気づきと一枚のエッチなイラストだけで十分でした。あとは高校生の有り余る想像力で日々の糊口を凌いでいました。

 

肝心のイラストは、パソコンを置き換えた際、紛失していしまいましたが、今も目を瞑れば、鮮明にまぶたに描くことができます。

 

夏のプールサイドに腰を掛けて、銀のビキニを身に着けた、ケモ化したウナギイヌの姿を。

 

 

三島、来ていいよ。語り終えたよ俺。激、飛ばしてよ。

もしかして分かってない? 三島も、みんなも?

………

 

 

チッ、しゃーねえな。

 

思ったよりエッチになっちゃったな。

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見せるのか?

え?

見せるのか? 人に。

……

 

 

 

 

 

 

4.怪獣8号

……

説明します。

 

もう皆さんは分かってきたかと思いますが、私はキャラクターそのものには欲情しません。概念です、概念になります。エロスとタナトス、性の本能と死の本能。彼の姿からその匂いを強く感じ取れるのです。

……

 

立川の書店で彼の等身大ポップを見た時、エッチじゃんと思いました、素直に。逞しい肉体を強調するデザインと骸骨モチーフのマスク。ちょいとエロスとタナトス過ぎやしませんか?

……

なにもグロテスクさを求めてはいません。屈強な肉体を持つ人物が死に屈するその瞬間、耽美で官能的な強い情動――エッチさがあると思いませんか?

ってごめん、勢いで話しちゃった。

 

三島なら分ってくれる?

……

 

 

 

 

 

ニコッ



 

三島さん……

 

 

 

 

 

 

 

 





 

私はこの世にひりつくような或る種の欲望があるのを予感した。汚れた若者の姿を見上げながら、『私が彼になりたい』という欲求、『私が彼でありたい』という欲求が私をしめつけた。その欲求には二つの重点があったことが、あきらかに思い出される。一つの重点は彼の紺の股引であり、一つの重点は彼の職業であった。紺の股引は彼の下半身を明瞭に輪郭づけていた。それはしなやかに動き、私に向かって歩いてくるように思われた。いわん方ない傾倒が、その股引に対して私に起こった。何故だか私には分からなかった。

三島由紀夫仮面の告白」より